記事詳細 国内、国外で短歌の表現活動を続けています。現代短歌 歌人 北久保まりこ

北久保まりこ プロフィール

北久保まりこ

東京都生まれ
東京都三鷹市在住
日本文藝家協会会員
日本PENクラブ会員
現代歌人協会会員
日本歌人クラブ会員
心の花会員
Tan-Ku共同創始者 Tanka Society of America

和英短歌朗読15周年記念動画
新作英文短歌
Spoken World Live発表作品

北久保まりこ

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歌人  北久保まりこ
記事詳細

ながらみ書房『短歌往来』2010年5月号 自然を詠む・撮る・描く「ノスタルジア-ヴェトナム-」

黒黒と土は黙せり枯れ果てし密林に神はゐたのだらうか
空芯菜(クウシンサイ)油炒めを食む真昼とほく農夫が火を焚いてゐる
郷愁へつづく煙景 水田に砂の色せる水牛の角
その後をながらへし老いの両の手にドリアン暗く熟れるヴェトナム
ゆふづつを観むとて出でつ古き血の匂ひは露地にふくらみにけり
流されず過去はしづみぬ 天の川寝釈迦のやうに映せるメコン
ささやかなひと時なるらむ現世は 岸辺に消えし蛍帰らず

 

下龍(ハローン)湾と湾内の石灰洞・四首
漏刻の主は女神か石筍の細き少年育まれゐつ
石灰洞に昔の時のよどむらし微睡んでゐる羊歯のひと群れ
下龍(ハローン)は霧を産む湾いにしへの銀の鱗をどこかに匿す
海上にカルストそびゆ深林を追はれし神をたづね来れば
遠目には頭骨めける山売りのジャックフルーツ 地平の埃
微かなる叫びを空に聴きたるや海鳥の羽に裂かれゆくとき
野良仕事帰りの黄牛五六頭のおたりのおたり車道をゆきぬ
隠りゐし霊いくたりか目覚めたりぬるき湿度が川面におりる
いつからか懐かしく見ゆる蛍なりわが守りたきものを無くして

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