歌人 北久保まりこ
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ながらみ書房『短歌往来』2024年10月号 「ソウルメイト」
ながらみ書房『短歌往来』2024年10月号に新作13首をご依頼賜りまして、どうもありがとうございました。
今夏(7月)、癌との闘いの末に帰天致しましたソウルメイトの挽歌連作を供養のつもりで詠ませて頂きました。
ソウルメイト
彼方よりノイズ交りに届きたり今し・・・方・・・Dが亡・・・くなりま・・・した
繋ぎるし手の温かさ ワタクシがフェイドアウトしてゆく真昼
本当かだうか判らず宙に浮く 浮きたるままに幾日か過ぐ
時だけが流れゆくなり予告なく皆ゐなくなる世界を置いて
いつの日か現実になると知りながら避けつづけるし時間がをはる
十七年も前だね私の朗読に涙せしD パサデナの秋
時間とは何なのだらう 急流にとりのこさるる岩の冷たさ
岩陰に消えゆくトカゲいくつかの小さき翡翠が転がるやうに
旅立ちは雄鹿月(バックムーン)の夜なりき天文学を好みたりしD
まだDを探してるやう暫くは祭の路地に迷子になりて
隔たれし距離と時差より解かれけり 魂が今肩を抱きぬ
百五十連作をともに編みたりき 我らのデュオが獅子座を駆ける
憧れはいつもだあれもゐない空 余韻をのこす打ち上げ花火