記事詳細 国内、国外で短歌の表現活動を続けています。現代短歌 歌人 北久保まりこ

北久保まりこ プロフィール

北久保まりこ

東京都生まれ
東京都三鷹市在住
日本文藝家協会会員
日本PENクラブ会員
現代歌人協会会員
日本歌人クラブ会員
心の花会員
Tanka Online Project
Tanka Society of America

和英短歌朗読15周年記念動画
新作英文短歌

北久保まりこ

当サイトはリンクフリーです。
左のバナーをご利用下さい。

歌人  北久保まりこ
記事詳細

ながらみ書房『短歌往来』2021年11月号 「わたくしの家 by the cat」

20211018_tankaohrai_01.jpg

 

20211018_tankaohrai_02.jpg

 

20211018_tankaohrai_04.jpg

 

20211018_tankaohrai_03.jpg

 

20211018_tankaohrai_05.jpg

 

三毛ちやんと呼びし誰かに救はれぬ濁流に呑まれたりし夏の日
先代の爪研ぎし跡のあるあたり和室のすみに落ち着きにけり  
相伴にあづかれる幸 マヨネーズちよいとかかりし鰹のタタキ 
爪切りが苦手なれどもその後のおやつ乙なり煮干しがかをる
叱りつつ皆笑ひたり父さまのグランド・ピアノの部屋に眠れば 
このところ頻繁に聞く獣の名 巨体なるらしキンキュージタイ 
病院とおんなじ臭ひ 耳慣れぬ人声響く廊下を恐る 
大好きな姉さま乗せて走り去るサイレン憎し土砂降りの夜  
天窓に銀砂となりてそそぐ月 主無き部屋ガランと広し 
幾晩を経しやわが身も熱を帯び震へ止まざる身をまるめゐつ
時間とは如何なる流れ 懐かしき笑みをやうやくつくりし主 
このまんま命果てても構はない この手の内がわたくしの家 

 

 十九年前、わが家にやって来た鯖白の猫に、ポレポレと名付けた。スワヒリ語で〈 ゆっくり 〉という意味である。彼女は、私に抱かれていれば上機嫌だ。宅配業者のお姉さんにも人懐こく擦り寄り、「ワンちゃんみたいな猫ですね。」とウケが良い。

 個性豊かなペットに、飼い主の私はどんな風に映っているのだろう。猫の目で見る小宇宙を覗くと、思った以上に面白く、不覚にもどっぷりと嵌ってしまった。これが、〔猫による短歌で綴る物語〕が生れた経緯である。

 さっきまでソファで寝ていた話題の主が、欠伸をして膝に乗って来ようとしている。これからも、名前の通り急がずに、与えられた時間を健やかに生きてほしい。