歌人 北久保まりこ
いりの舎 うた新聞
いりの舎 うた新聞
これまで発表してきた、短歌・鑑賞文などを発表します。
物心つくかつかぬか あんさつの報道の声意識の底に
モノクロの記憶に故き洋館の匂ひまじりぬ宇宙中継
不穏なる空気淀みしあの日より速まりたるや 滅びの時計
衝撃が家中を駆け抜けた。たった四歳一か月だった私が、それを鮮明に記憶していたのはなぜだろう。東京、目黒の祐天寺にあった父方の実家で、そのニュースを観た。
私は陰鬱な暗さと厳めしさから、玄関脇のその応接間が嫌いだった。アナウンサーの硬い声に、大人達が一斉に息をのみ、私は幼心に、何か不吉な出来事が勃発したと悟ったのだった。
私の中であの場所は、今も湿った匂いを放ち、時代の節目をかかえたまま蹲っている。



亡き祖母の声懐かしき春の地震(なゐ) 六つ八つならば風と知るべし
哀しみの色となりたり黄の色も 入り日薄れる菜の花畠
をさな児を伴ふ勿れ死者達の眼の光止まざる沖へ
生きるものなべて愛ほし食はざれば生きられぬゆゑ蚊もわれを喰ふ
水晶に針の孤独を閉ぢ込むる襟元 羞(やさ)しくグラスをあはす
いりの舎 『うた新聞』三月号 「読者自選一首」 に 下記作品が掲載になりました。
国境を越ゆる心に藍澄めり 旅人のまま死なむと思ふ
いりの舎 様 どうもありがとうございました。
『うた新聞』五月号 読者自選一首のページに 下記の歌をご掲載下さいました。
晩年とやがて言はるる月日あり 廃村に猫が欠伸してゐる
編集発行人の いりの舎・玉城入野様、ありがとうございました。
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『うた新聞』2014年五月号 読者自選ー首のページへ下記の歌をご掲載下さいました。 一心に流れて海へ放たるる生死の際のやうなる河口 編集発行人の いりの舎・玉城入野様 ありがとうございました。 |
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晩年とやがて言はるる月日あり 廃村に猫が欠伸してゐる |
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もう五年経つんですね柚子切りの蕎麦を啜れる亡母とゐた席 |
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今よりも赤かつたらうか太陽はマヤの人らの崇めゐしころ |
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